ヒバディノログ

 

 

 

 

 

 

『ある日その気まぐれは』

 

 

 

「子供扱いしないでよ」

そう、雲雀はディーノに対して良く口にした。

ディーノとしては特に子供と意識して接してるつもりはないのだが、つい頭を撫でたり、なにかと気を使ってやったりしてしまう。
子供扱いするなと言われても、実際子供なのだから仕方がない。
この場合実年齢のことであって、性格が極めて自己中心的で我が儘ですぐ拗ねたり咬み殺すと暴れたりだとかは、また別の話。(年齢不詳なのも別の話)

そんな雲雀が、今日は大人しかった。

雲雀の部屋とも呼べる応接室で、ソファーに並んで座り話をしている。
他愛もない話。
雲雀は相変わらず自分から話したりはしなかったが、「へぇ」とか「そう」など、珍しく相槌を打ってくれる。
そんな態度が嬉しくて、ディーノがうっかり頭を撫でてしまっても、不愉快そうに眉を寄せたるだけだ。
ディーノは「今日の恭弥はやけに機嫌良いなぁ」などと思った。
正直、こうして大人しく隣りに座っているのも珍しい。

大抵は特別な用事が無いなら追い出されるか、喧嘩を売られるか、自分は風紀の仕事に没頭して放って置かれるかだ。
それが、今はちゃんとディーノの目を見て話を聞いている。
ディーノは段々気恥ずかしくなって来て、逆に目を合わせずらかった。
自分が何を話しているのかも解らなくなってくる。
雲雀がこんなに聞いてくれているのに。

「ねぇ」

ディーノが心ここに在らずで話していると、唐突に雲雀が口を開いた。
ディーノはドキリと肩を揺らす。

「ん?」

さっき怒られなかったのを良いことに、笑いながらもう一度雲雀の頭を撫でた。
雲雀は嫌がる素振りを微塵も見せなかった。
やんわりとディーノの手を払う。

その手を、すっと伸ばした。

「今日は、子供扱いされているわけじゃないみたいだね」

くしゃり、雲雀はディーノの金糸をそっと撫でる。
ディーノは驚き、言葉を失って、目を見開いた。

「僕の前では、大人ぶらなくて良いよ」

無表情の雲雀。
しかし、その目は優しかった。

「…っ」

ふにゃり、とディーノの顔が歪む。
一番欲しかった言葉だった。

甘やかしてくれる部下は何千と居るが、今まで素直に甘えたことなんてない。

一番上で、強く優しく、いつも皆の頼りにならなくてはいけなかった。


だってディーノはボスだから。


本当は痛いのも悲しいのも嫌いな、「へなちょこ」のままの部分だってたくさん残っているのに、ずっと誰にも出せなかった自分。


「恭弥…」

ディーノは思わず、目の前で薄く微笑む少年の肩にもたれかかった。
雲雀の、いつもの冷たい態度なんて忘れて、ただただ縋った。
出会って間もないはずなのに、こんなにも自分の本質を見抜かれるなんて。
しかも、中学生。
悔しい気もしたが、今はそんなのどうでも良かった。
戦うことにしか興味の無いあの雲雀が、自分のこんなどうしようもない一面に目を向け、それを包んでくれた。

それは、なんて…幸福なこと。

「どちらが子供か解らないね」

雲雀はクスリと笑って、自分よりも身体の大きなディーノを抱き締めた。

「撫でて欲しいならそう言いなよ、気が向いたら優しくしてあげる」

優しく頭を撫でると、ディーノは少し笑ってから、ひとすじだけ涙を流す。


訳も分からず悲しくて寂しかっ
た。誰でも良いから手放しで甘やかして欲しいと思った。
それは時々、どうしようも無く襲って来る感情。


それを包んでくれるのが雲雀だなんて、思いもしなかったけれど。




「だから、僕以外に弱いトコ見せないでよね」


雲雀の声が、絶対的な響きを持って耳に入った。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『浸食スウィート』

 

 

 

 「うーん…」


夜が明ける。

朝日がカーテンの隙間から漏れて、ディーノの顔に日だまりを作った。
眩しいが眠気の方が強い。

ディーノは目を開ける事なく、腕の中にあるものをテキトーに抱き締めて身を縮めた。

リボーンに呼び出され、日本に着いたのが昨日。
さっそくツナ達と遊んで(リボーン曰く修行だが)
ツナの家はあまりに人口が多かったので、泊まらずにホテルに帰って来た。

今日の予定は何も無い。

帰国の飛行機は明日だ。

まったく、元家庭教師の赤ん坊は、大した用もないのにキャバッローネのボスを気軽に呼び付けてくれる。
まあディーノ的にはリボーンやツナやその周りのヤツらに会うのは楽しいので、これからも気軽に呼び出されるつもりだ。

今日は書類仕事を済ませたら、久しぶりに雲雀の顔でも見に行こうと思う。
きっと追い返されるか無視されるか、もしディーノに興味を持ってくれても、一日中戦うことになるだろう。

多分後者だな…と苦笑しつつ、あと五分したら起きると決め、ディーノはもう一度腕の中のものを抱き寄せた。


………。

…あたたかい?



なんだこれ。

ディーノは不思議に思って目を開けた。
腕の中には、さらさらで真っ黒な毛玉がある。

それが何か気付くのに数秒かかった。



「恭弥ーーー!!?」


ディーノはあまりの衝撃に跳び起きようとしたが、雲雀の腕がしっかりと腰に回されていたため、びくんと跳ねるだけに終わった。

「ななななな…!」

勢いの逃避が未遂に終わったため、ディーノはただ驚いて雲雀を見つめる。
記憶には無いが、ずっと抱き締めて眠っていたような気が…。
昨日ベットに入った時は、確かに一人だったのに。

丁度胸に雲雀の顔があって、髪の毛が首に掛かるのでくすぐったい。
恐る恐る顔を覗いて見ると、なんとも気持ち良さそうに寝ていた。

か、かわいい…。

ディーノは異常な状況にも関わらずそんなことを思って、なんとなく雲雀の髪に鼻を寄せる。
ふわりと香るのは、シャンプーの良い匂い。
胸の奥がキュンとして、ほんのり赤面する…が。

「この匂い、オレのシャンプーじゃねぇか…」

「勝手に借りたよ」

「のわあああッ!!」

雲雀の即答にディーノは素頓狂な声を出した。

「おまっ起きて…!」

「だってあなたうるさ
いんだもの」

「わ、悪い…」

ディーノが謝ると、雲雀は気持ち良さそうにあくびをした。
ディーノの体を引き寄せつつ目の前の胸板に額を押し付ける。

どうやら再び寝る気らしい。

ディーノは雲雀の睡眠の邪魔をしないように暫く静かにしていたが、ちょっと待てよ、と身を捩って雲雀を遠ざけた。

当然雲雀は不機嫌そうに目を覚ます。

「なに」

「なにじゃねぇよ!お前いつから居た?勝手に潜り込んで、びっくりするだろ!」

ディーノが雲雀の肩を押し退けながら言うが、寝起きの上に部下が居ないため力が入らない。
雲雀はなんでも無いことのようにその手を払った。

「いつからって、昨日の夜だよ。せっかく来たのにあなた寝てるんだもの」

「寝てたら起こせば良いだろ?なんで勝手に風呂入って、勝手にオレの服着て、勝手にベットで寝るんだ」

良く見ると雲雀が着ているものはディーノのTシャツで、まるで自分の物のように着ていた。
風呂に入ったということは、多分下着もディーノの物だろう。
ディーノは他人に服だろうが下着だろうが貸すのは全然構わないが、やはり一言くらい断りを入れて欲しいと思う。

こうも好き勝手されては舐められてる気がして面白くない。

少し説教してやろうと雲雀を睨むと、雲雀はそれ以上にディーノを睨んでいた。

「むかついたから」

「は?」

「あなたなかなか日本に来ないくせに、一番最初に会いに来るのが僕じゃないなんてむかつく」

雲雀は再びギュッとディーノを引き寄せ、胸に顔を埋めてしまった。

 キュン、とディーノの胸が鳴る。

コイツ…可愛いじゃねぇか!!

ディーノは説教のことなどすっかり忘れ、胸の内で叫んだ。
雲雀をぎゅうと強く抱き締めてやる。

「なんだよ早く言えよー。恭弥でもヤキモチ焼くんだな!」

可愛い!は怒られそうなので黙っておく。
しかし雲雀はすでに怒っていた。

「…随分嬉しそうだね」

低く恨めしそうな声で言う。
ディーノは一瞬怯んだが、それでもたった一人の大事な生徒だ。
生意気だろうが無愛想だろうが、可愛くて仕方がない。
それが柄にも無く焼きもちなんて焼いたものだから、普段ちっとも相手にされない分、嬉しくて堪らなくなる。

何をしたって、全部許せてしまう。

「そりゃあ嬉しいぜ。今日は午後から恭弥に会いに行くつもりだったけど、まさかそっちから来てくれるなんて思わなかったからな」

ふふふ、ディーノはにやけ顔で言った。
雲雀はそんなディーノの様子を見て、怒気が消えていくのを感じた。
ディーノは持ち前の天然と鈍感で雲雀を怒らせるのが上手いけれど、喜ばせるのも同じくらい上手かった。

きっと本人は知らない。

納得いかないのに頬が熱くなる。

こんな顔見せてやるものかと、雲雀はディーノのTシャツを捲り上げて…一気に侵入した。

「ひゃっ…うわ!」

いきなりのことにディーノは顔を真っ赤にしてしまう。
服と体の間に雲雀が収まった。
余裕のあるだぼだぼのシャツだったから、それほどきつくはない。

でも、これは…!!

「恭弥!や、やめろって!」

ディーノは慌てて叫ぶ。
雲雀の頬や手が胸の突起に当たっていて、変な気分になってしまいそうだ。

他の人間には何かの拍子に触られたって何とも感じないが、雲雀だけは、なんだかひどく照れ臭かった。

「で、出てけっ!」

「…部屋から?」

「Tシャツから!!!」

「………やだ」

「きょ~や~!」

「やだよ」

ディーノは聞き入れてくれない雲雀をどうすることもできず、また顔を赤くするしかない。

雲雀はすん、と鼻を鳴す。

ディーノの、日頃漂う香水の薫りとは違う、石鹸に混じる人間の匂いに、うっとりと目を細めた。

おいしそうだと、思う。

「良い匂い…」

「!!」

うっかり口に出た言葉に、ディーノばびくんと肩を揺らした。
素肌に密着している雲雀には、肌がほんの少し汗ばんだのがわかる。

それが嫌悪なのか興奮なのかは判らなかった。

「あなた、さっきから脈拍が速すぎ」

「だ、誰のせいだと…」

「僕なの?」

「…っ」

「気持ち悪い?」

ディーノは雲雀を怒鳴り付けてやろうかと思った。
しかしそれは、意外な声色に掻き消される。
寂しそうな、小さな声。
ディーノはまた心音を高めるはめになった。

気持ち悪い?
雲雀は男なのに、何をされたって気持ち悪いなんて思ったことがない。

もし他の人間が今の雲雀と同じことをしたらと思うと…

「恭弥」

ディーノは優しく雲雀を呼ぶ。
雲雀は抱き付く手に力を入れることで応えた。

強引で突拍子もなくて、解り辛いけれど…甘えているのだ。

ディーノは全身から伝わる雲雀の体温を愛しく思った。

「オレ、お前が可愛くて好きだから、何したって許しちまうみたいだ」

素直な気持ちを口にする。
雲雀がぴくりと動いた。
相手が解り辛いので、ディーノはストレートに気持ちを伝えるしかないのだが、少し恥ずかしかったかもしれない。

雲雀は何を思ったか、シャツの襟から顔を出した。
顔が近いのと首が苦しいので、ディーノの頬がまた赤くなる。
刺すような視線で見詰められ、恥ずかしい。

でもやはり、不快ではないのだ。

「もう好きにしろよ、いくらでも甘やかしてやるぜ」

ディーノは溜め息と笑顔を混ぜて、雲雀に言う。

「ほんと?」

雲雀が嬉しそうに聞き返す。
嬉しそうと言っても、笑顔になったわけではない。
ディーノがそう感じただけ。

「オレ、隠し事はしても嘘は吐かねぇよ」

「隠し事はするの」

「お互い様だろ?」

ディーノは小さく苦笑する。
自分はマフィアのボスだから、たとえ親族にだって言えないことが抱え切れないほどある。

しかし雲雀は(今はまだ)一般市民で在りながら、誰よりも謎が多い。
きっと隠し事も山程あるのだろう。

少し寂しいけれど、無理に知りたいとも思わなかった。

お互い言えないことはあっても、信頼し合ってるのはよく分かる。
だからこんな無防備の状態で戯れていられるのだ。

いつからこんな風に戯れ合うようになったのかは、覚えていなかった。


「でも、僕が教えてってお願いしたら、わからないでしょ」

雲雀はそれが当たり前のように、勝った風に笑った。

「それ、は…」

時と場合によるだろうが、確かに雲雀にお願いなんてされたら聞いてしまいそう。

ディーノは言葉に詰まって、視線を泳がせた。

黙ってしまったディーノの反応は、雲雀を満足させたようだ。

雲雀の顔に、ふ、と柔らかい笑顔が広がる。

ディーノは思わず見とれてしまって、





唇に温いものが触れたことに気付かなかった。







そしてこれも、きっと怒れないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そしてニヤリと笑った』

 

 

「あ~、疲れたー」

「応接室を休憩に使わないでよ」

「良いだろ別に。どうせ恭弥しか居ねぇし。ここのソファー好きなんだ」

「…ソファー?」

「おう、革張りなのにすっげぇ柔らかくて良いよな」

「出てって」

「なんでだよー!」

「こんなソファーなんかいくらでも買えるでしょ。ここに居る理由ないじゃない」

「応接室の雰囲気とかも好きだぜ?」

「応接室も作れば良いでしょ」

「無理言うな!」

「うるさい」

「うー、居ても良いだろ?」

「…」

「なあ」

「…」

「なんも言わないとずっと居るぜ?」

「……………」

「…ふはっ」

「なんで笑うの」

「楽しいから」

「は?」

「恭弥と居ると楽なんだよなぁ」

「…初めて言われたよ」

「だろうな。いや、だってさ、自分の心配しかしなくて良いんだもん。お前部下には手出さないし」

「群れてさえいなければ弱いのに興味はないよ」

「恭弥らしい」

「あのひげの人なら咬み殺してみても良いけどね」

「な、ロマーリオはダメだ!恭弥にはオレが居るだろ?」

「…変な言い方」

「あ、いや、変な意味じゃなくて」

「わかってるよ」

「はは」

「それにしてもあのひげの人、最近草壁と群れてるみたいだね」

「あぁ、そうなんだよなあ…なんか取られちまったみたいで複雑だぜ」

「あなたには僕が居るじゃない」

「…あはは、変な言い方だな」

「そのままの意味だよ」

「!」

「なに」

「…」

「ねぇ」

「………」

「何も言わないと、」








そしてニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕がまだあなたを嫌いだった頃、』

 

 

 


 

僕がまだあなたを嫌いだった頃、あなたは誰よりも優しかった。







「あなたなんか嫌いだ」

「ん、そうか?オレはお前のそーいう正直なトコ好きだぜ」

嫌いだ嫌いだ。
そんな優しい顔、僕に向けるヤツなんか居ない。
好きだなんて言うヤツ居ない。
遠くであなたの部下がほっとけって言ってるじゃないか。

「その笑顔も善人ぶってて変だよ。反吐が出るね」

「ははは、そんな汚ねぇ言葉どこで覚えんだよ」

子供扱いするな。
あなたただの偽善者でしょ。
へらへら笑って、余裕をアピールしてるの?
喧嘩を売ってるようにしか見えない。

「だから触らないで。ケガの手当てなんかいらない。咬み殺すよ」

「ばか、お前がオレを嫌いでも関係ない。どんだけボコボコにされても、オレはお前を治療してみせるからな」

ああもう苛々する。
咬み殺すと言ったら普通、逃げ出すか武器を構えるんだよ。
攻撃以外で触れられる手なんか、知らないんだ。

そんな優しい手付きで触らないで!







「僕…あなたが好きだよ」

「…オレ、そーいう冗談嫌いだ」

手を伸ばすと弾かれた。
あなたに触れたくて仕方がないのに。
遠くで沢田が心配そうに声を掛けてくる。
余計な気遣いは不要だよ。

「そういう、変に強がるトコ直せば可愛いのに」

「うるせぇ。余計なお世話だ、年上をからかうな」

優しくて真っ直ぐなあなたは何処に行ったの。
それとも僕の言うことは聞きたくない?
昔のあなたはあんなに可愛かったじゃない。

「ねぇ、良い子だからケガを見せてごらんよ。大人しくしてたらキスしてあげる」

「だから触るな…っていらねぇよバカー!!」







僕がまだあなたを嫌いだった頃、あなたは誰よりも優しかった。



僕があなたを好きになって、あなたは誰より冷たくなった。





ワオ。


僕達、一生両想いになれそうもないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが恋とも知らずに』(山ディノ)

 

 

 

 

あの日おれは

それが恋とも知らずに








ふわふわ、
ハチミツ色の髪の毛


太陽の光を
いっぱいいっぱい吸って


甘そうで
甘いにおいで



おれは飽きもせず
ずっとずっと眺めてた



振り向いたあんたが
あははと笑って


周りの空気が
キラキラと光った



かわいくて

キレイで

優しくて

あったかくて



あぁもう
どうしよう



知らない国の知らない街で

それでも

海風を懐かしいと感じたのは



あんたが居たから


あんたと一緒に歩いたから



あんたと一緒だと

おれはこんなにドキドキして

こんなにここちよくて



それが恋とも知らずに


ただただ

好きだと思った



光、空気、匂い、声


ディーノさんが好きだ





ディーノさんの笑顔が見れたなら



その日は幸せ



一日中、幸せ












日本に帰って

はなればなれになって

そのまま月日が過ぎた



毎日毎日


思い出す

想い出す


ディーノさんの笑顔


いつもいつも笑顔



会いたくて

会えなくて


どうしようもない夜に



会いたいです、って
メールを打った



送信ボタンを押してから
おれはバタバタ
ベットを転がって


あぁぁ止めときゃ良かった

うぅぅ止めときゃ良かった


嫌われたらどうしようって
泣きそうになる



でも、でも

もしも、そしたら

ええっと…どうしよう



うだうだうだ



珍しく頭を使ったから
疲れたらしく
そのまま変なカッコで寝ちまって

なんかよく覚えてないけど
いやないやな夢を見て

朝には
痛い首としびれた足



最悪の気分で起きた



半べそかいて
手のひらを見ると


ピカピカ光る携帯電話



ディ、ディーノさん!



慌てて開く





おれも会いてぇぞ(>_<)
近々そっち行く(^з^)-☆
スシ用意しとけよ!(笑)





なんて日本人みたいなメールが
返って来てて




今度は嬉しくて転がった



ディーノさんが
ディーノさんが

おれに会いたいって!



あーあ
このチュッてしてる顔文字が
ディーノさんだったらなあ



ドキドキして
その日は一日は
バカみたいにはしゃいだ



ツナには変な顔されたし

獄寺にはウザいっていわれた



でもでもでも

そんなの気になんねぇよ



好きだ好きだ



ディーノさん!








待ち望んだ来日の日


真っ先に駆け寄ったおれに


あんたは


その太陽みたいな笑顔で


ハグをくれた


山本はかわいいな、って
頭を撫でてくれた



初めて感じた
ディーノさんの体温は

甘くて甘くて



すごく、甘くて






「ディーノさん、おれ、あんたが大好きです!」






それが恋とも知らずに



愛の告白を、した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが恋とも知らずに』

 

 

 

 

あの日ぼくは
それが恋とも知らずに









ふわふわ、
ハチミツ色の髪の毛


太陽の光を
いっぱいいっぱい吸って


甘そうで
甘いにおいで



ぼくは何も考えず
ただ眺めていた



振り向いたあなたが
あははと笑って


周りの空気が
キラキラと光った



うるさくて

ばかで

ドジで

酷くむかつく



あぁもう
どうしよう



見慣れた屋上の見慣れた空の下


それでも


全く新しい場所のように感じたのは



あなたが居たから

あなたと一緒に居るから



あなたと一緒だと


ぼくはこんなにイライラして


こんなに落ち着かなくて





それが恋とも知らずに



ただただ
嫌いだと思った



光、空気、匂い、声


跳ね馬なんか嫌いだ



跳ね馬の笑顔なんか見たら
その日は呼吸が下手になる



一日中、息が苦しくなる










あなたが帰って
顔を見ることも無くなって



そのまま月日が過ぎた



毎日毎日


思い出す

想い出す



跳ね馬の笑顔

いつもいつも笑顔




殴りたくて

殴れなくて



どうしようもない夜に



日本に来なよ、って
メールを打った



送信ボタンを押してから

ぼくはムカムカ

携帯を投げ捨てて



バカみたいだ止めときゃ良かった

気分悪い止めときゃ良かった



勘違いされたらどうしようって

頭が痛くなる



でも、でも

もしも、そうだとしたら

まったく…どうしよう



ぐるぐるぐる



珍しく考え事をしたから
疲れたらしく
制服のまま寝てしまって


なんだかよく覚えてないけど

いやないやな夢を見て


朝には
息苦しさとしわしわのシャツ


最悪の気分で起きた



悪態を吐きながら
床を見ると



ピカピカ光る携帯電話



………跳ね馬か



仕方ないから開く





なんだよ急に!?
そんなにオレに会いたいか(^□^)
まあ近々そっち行くから待ってろよ!





なんて日本人みたいなメールが
返って来てて


今度はつい携帯を折りそうになった



跳ね馬が

跳ね馬が


ぼくが会いたがってると勘違いを…



あぁ
この余裕そうな絵文字が
跳ね馬そのものなんだろう


ムカムカして
その日は一日は
バカみたいに狩りをした



小鳥は近寄って来なかったし

副委員長は生意気に止めようとしてきた



でもでもでも
そんなのどうでもいい



嫌いだ嫌いだ

あのバカ馬!











待ち望んだ来日の日



真っ先に殴り掛かったぼくを



あなたは



その太陽みたいな笑顔で



抱き止めてきた



恭弥は怖えぇな、って

ぼくを押さえ付けるように




初めて感じた
跳ね馬の体温は


甘くて甘くて



むせ返るほど、甘くて






「あなたなんか大嫌いだ、グチャグチャに咬み殺す」






それが恋とも知らずに




唇に咬み付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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